

退院しても落ち着きどころのなかった私は、
ティップネスというジムに通い始めた。
駅前の比較的大きなジムで
たぶんたくさんの人が通っている。
私は休職中の身である。
しかも職業が幼稚園教諭。
精神疾患で休んでいることも多分ばれている。
なので絶対に保護者や関係者には会いたくない。
そんなことを最優先にしたら
答えとして駅前のマンモスジムに通うことになった。
人が多ければ、目立たないはず。
広めのジムなら鉢合わせしても
身をひそめる場所があるはず。
休職中は本当に肩身が狭い。
世の中に迷惑をかけているのはわかるけど、
忍者生活は時々高血圧で死ぬんじゃないかと思うほど
体にストレスがかかる。
それでも、ジムで行われるピラティスやヨガ、
調子のよい時はヒップホップダンスまで
汗を流せるのは幸せだった。
しかもアフタヌーン会員なので、
安い。
おじちゃま、おばちゃまばかりで、
緊張感はあまりない。
家にいるよりはよっぽどいい。
音楽を聴きながら
エアロバイクを漕いで
窓の外の景色を眺めていた私。
突然、肩をたたかれた。
Σ(・□・;)
焦る。
瞬時に予想する。
誰だ。
スタッフか?!
二度も肩をたたかれる。
しつこい。
ゆっくり無表情で振り返る。
男・・・
知らない。
誰??
記憶をたどる。
出てこない。
もっと記憶をたどる。
懐かしい感じはする。
この空気感は知っている。
名前は出ない。
相手がしゃべる。
「〇〇でしょ!」
初対面でいきなり苗字を呼び捨てで呼ぶやつはいない。
思い出す。
そう、あいつ。
小学校の同級生。
4年ぶり。
成人式以来。
完全に油断していた。
あってはいけない地元民。
なんで、こんな時間にいるんだと言おうとしたが、
おまえもな
と返されそうで黙り込む。
その日は金曜日。
このジムに通っているのは確か。
毎日いるのか。
今日たまたまか。
挨拶だけして帰った男。
挨拶中もペダルをこぎ続けた私。
ペダルをこいで動揺を隠した私。
来週はジムに通えるのか
不安になった金曜日。